【Ep.2】コロナと日本社会 ― 変わりゆく日常

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全体構成案(シーン概要)

  1. シーン1:「春先の混乱」
    • 中学生・彩乃(あやの)がニュースで初めて新型コロナウイルス感染症の流行を知り、不安を感じ始める。
    • 周囲ではイベント中止やマスク不足が起き、家庭や学校に緊張感が漂う。
  2. シーン2:「休校措置とオンライン授業」
    • 全国的に学校の臨時休校が決定し、彩乃は在宅での学習や生活リズムの変化に戸惑う。
    • リモート授業やクラスメイトとのオンラインでのやり取りを体験し、これまで当たり前だった学校生活を改めて見つめ直す。
  3. シーン3:「新しい日常を探して」
    • 緊急事態宣言の解除後、徐々に学校が再開。分散登校やイベント規模の縮小など、新しい生活様式に合わせて試行錯誤が続く。
    • 彩乃が変化に向き合い、自分なりに前向きな行動を考え始める。
  4. あとがき・用語集・参考資料
    • 作品を振り返っての総括や、新型コロナウイルス感染症に関連する基本的な用語解説。
    • 信頼できる情報源の提示。

登場人物紹介

  • 彩乃(あやの)
    中学3年生。部活動は吹奏楽部でクラリネット担当。好奇心旺盛だが、未知の病気に対しては漠然とした不安を感じやすい。
  • 恵(めぐみ)
    彩乃の母。パート勤務。料理や家事に加え、家族の健康管理にも気を遣う。
  • 徹(とおる)
    彩乃の父。会社勤め。コロナ禍で在宅勤務や時短出勤を経験する。
  • 山岸先生(やまぎしせんせい)
    彩乃の担任。英語科担当。生徒たちが混乱しないよう、休校中の学習方法やメンタル面もケアしようと努める。
  • クラスメイトたち
    同じクラスの仲間。オンライン連絡やSNSなどでときどき情報交換をする。

本編

シーン1.春先の混乱

【情景描写】
まだ寒さの残る三月初旬、朝のニュース番組では「新型コロナウイルス感染症」という言葉が繰り返し流れ始めていた。彩乃は朝食を済ませようとダイニングテーブルに向かう。窓の外は、冷たい風がビルと住宅街の隙間を吹き抜けている。

テレビでは、マスクを求めて長い列を作る人々の映像が映し出され、どこか遠い国の出来事と思っていたコロナの話題が日常に入り込んだような感覚がする。

【会話】

  • 【彩乃】
    「(テレビを見ながら)お母さん、これ……日本でもこんなに広がってるんだ。ちょっと怖いね。」
  • 【恵(母)】
    「そうなのよ。中国で大変って聞いてたけど、もう日本も他人事じゃなくなってきたわね。マスクも手に入りにくいし……。あなたも、帰ってきたらしっかり手洗い・うがいするのよ。」
  • 【彩乃】
    「うん、わかった。そういえば、部活のコンクール予選ってどうなるんだろう? 中止かもって先輩が言ってたけど……。」
  • 【恵(母)】
    「どうなるのかしらね。今はあちこちのイベントが中止になってるし。学校から連絡があるまで、あまり不安になり過ぎないようにしよう。」

彩乃は制服に着替えながら、もしコンクールが中止になったら……と考えると、言いようのない喪失感を覚える。昨年から練習してきた曲を披露する機会が失われるのは、残念で仕方なかった。

【情景描写】
登校すると、クラスメイトたちも同じ話題でざわついている。教室ではマスクをつけている子も増え、彩乃は持参したアルコールスプレーで手指を消毒。心なしかクラス全体がピリピリしているように感じた。


シーン2.休校措置とオンライン授業

【情景描写】
さらに数日後、政府が全国の小中高校に対し「臨時休校を要請する」というニュースが飛び込んできた。朝のHR(ホームルーム)で、担任の山岸先生はいつになく真剣な表情で話を始める。

【会話】

  • 【山岸先生】
    「みんな、もう知っていると思うけど、来週からしばらく学校が休校になります。どうやら感染拡大を防ぐためということで……。もちろん部活も全部中止になるから、気を付けてね。」
  • 【彩乃】
    「(戸惑いながら)えっ……急ですね。じゃあ、吹奏楽部のコンクールは……。」
  • 【山岸先生】
    「ごめん、彩乃。コンクールは残念ながら中止が決まったよ……。私もとても悔しいと思うけれど、今は健康と安全を優先しなくちゃいけない。」
  • 【クラスメイトA】
    「じゃあ、僕たちは家にずっといるんですか? 課題はどうなるんですか?」
  • 【山岸先生】
    「学校としても初めての事態だからね。オンライン授業を試験的にやってみる予定だけど、通信環境が整わない家庭もあるし……。配布するプリントや動画配信サービスを使って学習する方法を考えてるわ。」

教室は一気に騒がしくなる。卒業式がどうなるか、受験に響かないか、いろいろな不安が頭をよぎる。彩乃も目の前が真っ暗になる思いだったが、「今は仕方ない」と言い聞かせるしかなかった。

【情景描写】
それから休校生活が始まった。朝起きても制服を着る必要がないのは気楽な半面、生活リズムが崩れる。両親も不規則な勤務形態になり、家の中でみんなが落ち着かない雰囲気になっていった。


【会話】

  • 【徹(父)】
    「ただいま……。今日は会社に行ったけど、明日から在宅勤務になりそうだよ。IT部門の人たちがリモートワークできるよう調整してくれたんだ。」
  • 【恵(母)】
    「お疲れさま。そう……じゃあ、明日からうちは三人とも家にいるのね。狭いリビングだけど、朝から夜まで賑やかになりそう。」
  • 【彩乃】
    「(疲れた表情で)私もオンライン授業やるって連絡来たけど、Zoomとかよくわからないし……。先生たちも慣れてないみたい。何より、部活がないのがやっぱり落ち着かないなあ。」
  • 【徹(父)】
    「初めてのことだし、みんな戸惑うよ。だけど、感染を抑えなきゃ医療崩壊が起こるかもしれないって、ニュースでも警告してる。予防のために少しでも協力できるなら、家にいるのも仕方ないと思おう。」
  • 【恵(母)】
    「今は耐える時期なのかもね。彩乃、家での勉強も大事だけど、ストレッチや軽い運動くらいはしたほうがいいわよ。体がなまっちゃうから。」

彩乃はうなずきながら、自室へと戻る。オンラインで友達とメッセージを交わしたり、配布された課題を解いてはみるものの、教室で学んでいたのとは違う不安定さを感じていた。


シーン3.新しい日常を探して

【情景描写】
やがて春が過ぎ、気温が上がり始めるころ。政府は数回の緊急事態宣言を経て、感染状況が落ち着いた地域では徐々に学校再開の方針を示す。

彩乃の学校でも、分散登校という形で生徒が週に数回登校できるようになった。久しぶりに校門をくぐると、まばらに登校する生徒たちの姿があり、どこかぎこちない空気が流れている。

【会話】

  • 【クラスメイトB】
    「彩乃、ひさしぶりー! なんかめっちゃ久々に人としゃべる気がする……。」
  • 【彩乃】
    「ホントだね。オンラインで顔を合わせてたけど、こうして直接会うのはやっぱり違うなぁ。……でも、マスク越しだし、ソーシャルディスタンスを取らないといけないし、ちょっと変な感じ。」
  • 【クラスメイトB】
    「うん。でも再開してよかったよ。家にずっといると気分落ち込むし、勉強もペースわからなくなっちゃうし……。」

廊下を歩くと、壁に「密閉・密集・密接を避けよう!」というポスターが貼ってある。給食も教室ではなく、時間をずらして食堂を使うなど、以前の学校生活とは大きく様変わりしている。

【情景描写】
放課後、彩乃は吹奏楽部の仲間と顔を合わせる。とはいえ、合奏はせず少人数で音を合わせるだけで、時間も短縮されていた。

しかし、みんながそれでも演奏できる喜びをかみしめている表情を見て、彩乃は少しだけ前向きな気持ちになった。


【会話】

  • 【彩乃】
    「これが、私たちの“新しい日常”ってやつなのかな。マスクや消毒液は常に手放せないし、行事も規模縮小ばかり。だけど、こうして部活のみんなと顔を合わせて練習できるだけで嬉しい。」
  • 【クラスメイトC】
    「うん。最初は戸惑ったけど、感染症対策しながら少しずつ活動を取り戻すしかないんだよね。来年もどうなるかわからないけど……。」
  • 【彩乃】
    「不自由なことは多いけど、これを機にオンラインの良さとか、友達と支え合う大切さとか、いろんなことに気づいた気もする。」

彩乃の胸には、「大変な時こそ、お互いに理解し合って乗り越えるんだ」という気持ちが芽生えていた。世の中はまだ先の見えない状態だが、日々の生活が戻りつつあることに安堵を覚える。

下校時、彩乃は空を見上げる。青空には、初夏の太陽がまぶしく光っていた。まだ完全な終息にはほど遠いが、それでも社会が一歩ずつ前に進んでいるのを感じる。(また、みんなで元気に合奏できる日は来るはず。私たちは、この経験を無駄にしないで成長していこう。)
彩乃は心の中でそうつぶやき、笑みを浮かべた。


あとがき

この作品「コロナと日本社会 ― 変わりゆく日常」では、新型コロナウイルス感染症が広がり始めた初期の混乱から、休校措置・オンライン授業を経て、日常を少しずつ取り戻していく過程を中学生・彩乃の視点で描きました。

私たちは突如として世界的なパンデミック(感染症の世界的大流行)に直面し、当たり前だった生活が一変しました。しかし、その中で家族や友人、地域社会、さらには国全体が手を取り合って協力する場面もありました。

自分たちの生活や学習が大きく変わったことで、戸惑いや不安を抱いたのではないでしょうか。そんな時代を生きるからこそ、一人一人が考え、行動する力が求められているのかもしれません。

本編で描かれた出来事は、事実に基づいていますが、彩乃のエピソードはあくまでフィクションです。とはいえ、多くの生徒が似たような経験をしたことでしょう。

この作品を通じて、「未知の出来事が起こったときに、私たちはどう対処すべきか」「社会の動きにどう関わっていくか」を考えるきっかけになれば幸いです。

次回:【Ep.3】夢をつなぐ東京2020 ― オリンピック・パラリンピックがもたらしたもの


用語集(歴史を学ぶうえで重要な用語の解説)

  • 新型コロナウイルス感染症
    2019年末に中国で確認された感染症で、正式名称は「COVID-19」。発熱や咳、重症化すると肺炎などを引き起こす。世界中でパンデミックを引き起こした。
  • 緊急事態宣言(きんきゅうじたいせんげん)
    政府が感染症の拡大や災害など、国民生活に重大な影響を及ぼす恐れがある際に発出する宣言。外出自粛やイベント中止の要請が行われる。
  • オンライン授業
    インターネットを通じて行う遠隔授業。映像通話や配布教材を用いて学習を進める。コロナ禍で一気に普及した。
  • 3密(さんみつ)
    「密閉」「密集」「密接」の3つを指し、感染リスクを高めるとされる状況。コロナ禍で「3密を避けよう」という呼びかけが広く行われた。
  • ソーシャルディスタンス
    他者との距離を保つことで感染のリスクを下げる対策。1〜2メートルほど離れて会話・接触することが推奨された。

参考資料

  • 厚生労働省公式サイト(新型コロナウイルス感染症に関する情報)
  • WHO(世界保健機関)のパンデミック宣言関連報道
  • 文部科学省・各教育委員会のオンライン授業対応ガイドライン
  • 新聞各紙・テレビ局の特集記事「COVID-19と日本社会」

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