全体構成案(シーン概要)
- シーン1:「デジタルの波がやってきた」
- 中学3年生・華(はな)が、両親のマイナンバーカード申請やデジタル庁創設のニュースに触れ、「行政のデジタル化って何だろう?」と興味を抱く。
- 日常生活の中でデジタル技術が加速度的に普及していることを実感する。
- シーン2:「SDGsを学ぶ授業」
- 学校でSDGs(持続可能な開発目標)に関する特別授業が行われ、華が地球環境や社会問題に目を向ける。
- デジタル技術とSDGsがどのように結びつくのか、クラスメイトとのディスカッションを通じて考え始める。
- シーン3:「未来をデザインする」
- 華が地域の環境イベントに参加し、ITツールを活用した取り組み(フードロス管理アプリなど)を体験する。
- 自らの将来の進路や、社会課題を解決する力としてのデジタル技術について希望を抱く。
- あとがき・用語集・参考資料
- デジタル庁やSDGsの概要をまとめ、本作を振り返りながらデジタル化や環境・社会課題について考えるきっかけを提示。
登場人物紹介
- 華(はな)
中学3年生。好奇心旺盛で新しいもの好き。部活動は美術部で、クリエイティブな発想が得意。家族の日常や社会の動きを通じて、デジタル技術と社会課題のつながりに興味を持ち始める。 - 孝一(こういち)
華の父。会社員でIT関連部署のプロジェクトに携わっている。最近は在宅勤務が増え、デジタル化の波を実感中。 - 美由紀(みゆき)
華の母。パート勤務と家事を両立している。手続きや文書の管理はアナログ派だが、最近はマイナンバーカード申請やオンライン手続きの必要性を感じ始めている。 - 坂井先生(さかいせんせい)
華の社会科担当。時事問題にも精通し、SDGsや最新の技術トレンドを授業に取り入れようと工夫している。 - クラスメイトたち
中学3年の仲間。デジタル技術やSDGsについて、興味や温度感はさまざま。
本編
シーン1.デジタルの波がやってきた
【情景描写】
秋の朝、少し肌寒い空気の中、華は朝食をとりながらテレビのニュースを見ていた。リビングの窓からはやわらかな日差しが差し込んでいる。ニュース番組では、「デジタル庁が本格始動」という見出しが映し出され、キャスターが「行政手続きのデジタル化を加速させる」と伝えている。
ソファーにはタブレットを手にした父・孝一が腰掛けており、スマホを片手にする母・美由紀がキッチンでバタバタと準備を続けている。
【会話】
- 【華】
「お父さん、デジタル庁って最近よく聞くけど、何をするところなの?」 - 【孝一(父)】
「簡単に言うと、役所とか行政の手続きをネットでスムーズにできるようにしたり、国全体のIT化を進めたりするんだ。マイナンバーカードの普及とかも大きなテーマだね。」 - 【美由紀(母)】
「そういえば、私もこの前ネットでマイナポイントの申し込みをしようと思ったら、けっこう手順が複雑で大変だったわ。もっとわかりやすくなるといいんだけど……。」 - 【華】
「ふーん。私たち中学生の生活にも影響あるのかな。たとえば、成績表とか健康診断の結果なんかも、いずれデジタル化されるとか?」 - 【孝一(父)】
「可能性はあるよね。世界ではオンライン化やAIの活用がどんどん広がってるし。日本も遅れないように動き出してるんだろう。」
華は「デジタル庁」「デジタル化」という言葉が、どこか近未来的に感じられて、少しワクワクしてきた。だが同時に、母が「わかりにくい」と嘆くように、便利になる反面、乗り遅れた人はどうなるのだろうという疑問も湧いてくる。
シーン2.SDGsを学ぶ授業
【情景描写】
午後の社会科の授業。教室に集まる生徒たちの前に、坂井先生がSDGs(持続可能な開発目標)のアイコンが並んだパネルを示している。色鮮やかな17の目標がずらりと並ぶ。
【会話】
- 【坂井先生】
「みんなは『SDGs』という言葉を聞いたことがあるよね。これは2015年に国連で採択された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す目標なんだ。例えば、貧困をなくす、飢餓をゼロに、気候変動対策を進める……いろいろあるよ。」 - 【クラスメイトA】
「テレビCMとかでよく見るけど、正直、自分とは遠い話に感じる……。」 - 【クラスメイトB】
「私は、レジ袋有料化とかプラスチック削減の話をよく見るよ。海洋プラスチックが問題だって聞いた。」 - 【華】
「SDGsっていっぱい項目があるけど、何から手をつけていいか分からない気もする。たとえば学校の生活でできることって、ゴミの分別とか節電くらいかな?」 - 【坂井先生】
「それも立派な一歩だよ。大切なのは“自分でできることを考える”姿勢。最近はデジタル技術を使って、食品ロスを減らすアプリとか、再生可能エネルギーの管理システムが作られているんだ。デジタル化とSDGsが結びつくと、より効率よく課題を解決できる可能性があるんだよ。」
教室には「ほほう」と感心する声が上がる。華も耳を傾けながら、ふと「そういえば父が言っていた“IT化が社会を変える”ってこういうことかな?」と思いめぐらす。
【情景描写】
坂井先生は黒板に「デジタル技術 × SDGs = ?」という図を描き、クラス全員に問いかける。
「みんなも身近な課題を取り上げて、どうやったらテクノロジーを活用して解決できるか考えてみよう」――授業はそんな宿題を残して終了した。
シーン3.未来をデザインする
【情景描写】
週末の午後。学校の探究学習の一環として、華は近所の公民館で開催される「地域の環境フェスティバル」に参加することにした。会場は手作りのポスターや環境関連のパネル展示で賑やか。食事ロス削減やリサイクル促進など、さまざまな取り組みを紹介している。
【会話】
- 【華】
「(会場を見渡しながら)へぇ、こんなにいろいろなブースがあるんだ。どれを見たらいいか迷っちゃう。」 - 【ブーススタッフA】
「いらっしゃい。ここでは、食品ロスを減らすアプリの体験コーナーをやってるよ。お店で売れ残りそうな食品を、格安で販売情報として発信できる仕組みなんだ。」 - 【華】
「おお……(スマホ画面を見せられて)これ、地図上にお店と値下げされた商品が表示されるんですね。リアルタイムで更新されるから、無駄が減りそう。」 - 【ブーススタッフA】
「そうそう。これを作った学生チームは、『フードロス×デジタル』でSDGs目標の一つ「つくる責任・つかう責任」に貢献しようって考えたらしいよ。」
華は一通り体験しながら「こういう身近なところにもITが使われているんだ……」と感心する。
他のブースでは、ソーラー発電モジュールの可視化システムや、家庭内の電力使用量をスマホからチェックできるサービスなどが紹介されていた。
【情景描写】
その後、華は屋外ステージで行われているトークセッションを覗きに行く。地域のNPO代表が「市民一人ひとりが小さな取り組みを持ち寄ることで、大きな変化につながる」と語り、会場からは拍手が巻き起こる。
デジタルの力を使えば、情報共有や資源の有効活用がしやすくなり、SDGsの達成に一歩近づく――そんなメッセージが多くの人の心に届いているようだ。
【会話】
- 【華】
「(心の声)私も、将来はこんなアプリや仕組みを作ってみたいかも。美術部で学んだデザインの力と、デジタル技術を組み合わせれば、もっと多くの人を巻き込めるのかな……。」 - 【孝一(父)】
「華、すごく真剣に見てたな。興味が出てきたのか?」 - 【華】
「うん! 今まではSDGsとかって、ちょっと遠いテーマに感じてたんだけど、デジタルツールを使えば身近なところからでも社会を変えられるかもしれないって思った。」 - 【美由紀(母)
「それは素敵ね。私も最初はオンライン申請って面倒だと思ってたけど、慣れてしまえば便利だし、その延長で社会課題が解決できるなら、私も挑戦してみたいわ。」
華は“未来をデザインする”という言葉が頭に浮かぶ。自分のクリエイティブな感覚を活かして、環境問題や地域課題を解決できる仕組みを生み出す――そんな夢がふくらんでいくのを感じた。
あとがき
「社会とイノベーション ― デジタル化とSDGs」では、令和の時代に急速に進むデジタル化と、世界的に注目されているSDGsの取り組みを、中学3年生の華の視点を通して描きました。
行政手続きのオンライン化やマイナンバーカードの普及といった政策は、私たちの暮らしを便利にすると同時に、使いこなせる人とそうでない人との間に格差を生むリスクもはらんでいます。一方で、SDGsのように持続可能な社会を目指す上で、デジタル技術は情報共有や資源管理を効率化し、これまで解決が難しかった課題に新しいアプローチを与えてくれます。
遠い未来の話に思えても、実は日常生活にすぐ役立つアイデアはたくさんあります。華のように「少しでも興味を持つ」ことが、やがて大きな変化を生み出す原動力になるかもしれません。
みなさんも、身の回りの課題に目を向けて、デジタル技術と組み合わせて考えてみませんか。きっと未来をデザインするヒントが隠れているはずです。
次回:【Ep.6】未来を見つめる日本 ― 世界情勢と平和への歩み
用語集(歴史を学ぶうえで重要な用語の解説)
- デジタル庁
2021年9月に発足した日本の行政機関。行政のデジタル化やマイナンバーカードの普及、ITインフラの整備などを推進し、国民が便利に手続きやサービスを利用できる環境を作ることを目指している。 - SDGs(エスディージーズ)
Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称。2015年に国連で採択され、2030年までに貧困や気候変動などの課題を解決し、持続可能でより良い世界を目指す17の目標を示している。 - マイナンバーカード
日本の社会保障・税・災害対策のための制度「マイナンバー(個人番号)」を基にしたICカード。本人確認や行政サービスのオンライン手続きに利用できる。さまざまなサービスとの連携が進められている。 - 食品ロス(フードロス)
食べられるのに廃棄されてしまう食品の総称。日本では年間600万トン以上の食品ロスが発生しており、これを減らす取り組みがSDGsの観点からも注目されている。 - バリアフリーやデジタル格差
デジタル技術が浸透する一方で、高齢者や障がいのある方などが使いこなせず疎外されるリスクがある。社会全体が公平に恩恵を受けられる環境整備が課題。
参考資料
- デジタル庁公式サイト(行政デジタル化に関する最新情報)
- 外務省・環境省などのSDGs特設ページ
- 国連公式サイト(SDGsの詳細情報)
- 各種新聞・テレビ局の特集記事(デジタル化や食品ロス削減、地域の取り組みに関する報道)
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