全体構成案(シーン概要)
- シーン1:「新首相誕生」
- 中学3年生・麻美(あさみ)が、令和になって初めての首相交代(菅義偉首相就任)のニュースを知る。
- 家庭や学校で「首相ってどんな役割を果たすの?」と疑問を抱きながら、コロナ禍や政権運営の現実に触れる。
- シーン2:「衝撃の事件」
- 安倍晋三元首相の銃撃事件(2022年7月)を、麻美がニュースで知って大きなショックを受ける。
- クラスメイトや先生との会話を通じ、民主主義や政治家の安全について考えを深める。
- シーン3:「岸田政権の船出」
- 岸田文雄首相就任後の動きや政策、国際情勢への対応が話題に。
- 麻美たちがリーダー交代と政治の在り方を身近に感じながら、これからの日本の行方を思案する。
- あとがき・用語集・参考資料
- 作品を振り返り、政権交代や政治リーダーシップの意味を整理。
- 令和における政治の変遷や、今後の課題に関する簡単な解説。
登場人物紹介
- 麻美(あさみ)
中学3年生。学校の学級委員を務める。ニュース番組や社会科が好きで、クラスメイトの相談役になることも。最近はコロナ禍での政治の動きが気になり始める。 - 大輝(だいき)
麻美の父。普通の会社員だが、新聞やネットニュースをよくチェックし、政治の話題にも詳しい。普段は穏やかだが、政治的な話題になると熱心に語る。 - 奈緒(なお)
麻美の母。パート勤務。ニュースには興味があるものの、難しい政治の話には少し苦手意識を持っている。 - 西川先生(にしかわせんせい)
麻美の社会科担当。令和の政治についても生徒が興味を持てるような授業をする。民主主義の意義や政治参加の重要性をよく説明してくれる。 - クラスメイトたち
麻美と同じ3年生。政治への関心や意見はバラバラで、中には全く興味のない生徒もいる。
本編
シーン1.新首相誕生
【情景描写】
9月のある朝、朝食をとりながらテレビのニュースを眺めている麻美。窓の外はまだ蒸し暑さが残るが、風はわずかに秋の匂いを運んできている。ニュースキャスターが「新首相・菅義偉氏が正式に就任しました」と伝える声が部屋に響く。
【会話】
- 【麻美】
「お父さん、安倍さんが首相をやめて、新しい首相に菅(すが)さんって人が就任したんだって。これってそんなに大きなニュースなの?」 - 【大輝(父)】
「もちろん大きいよ。安倍さんは戦後最長の在任日数を記録した首相だったからね。長く続いた政権が変わるってことは、新しいリーダーがどんな政策をするかで日本の方向が変わるかもしれない。」 - 【麻美】
「なるほど……コロナ禍で大変な時期だし、新しい首相ってどんなことをするんだろう。」 - 【奈緒(母)】
「私も政治に詳しくないけど、携帯電話料金の値下げとか、デジタル庁の話とかが取り沙汰されてるみたい。コロナ対策はどうなるのかなって心配よね。」
麻美はパンをかじりながら、テレビ画面に映る新首相の記者会見を凝視する。小さな画面越しでも伝わる緊張感。自分の生活にも関わってくるかもしれない――そう思うと胸が少し高鳴る。
【情景描写】
学校では早速、大きな話題になる。ホームルームの後に社会の授業が始まると、西川先生がニュースの切り抜きやタブレットを用いて解説を始めた。
【会話】
- 【西川先生】
「みんな、今朝のニュースを見たかな? 新首相が就任したってことで、『政権交代』というほどの大きな変化ではないけど、国のリーダーが代わる出来事は重要だよ。特にコロナ対策や経済政策が注目されているんだ。」 - 【クラスメイトA】
「でも、正直、首相が変わって何が変わるんだろう……。僕、あまり実感がわかないです。」 - 【麻美】
「……私もテレビで見たけど、どんな法律が変わるかとか、私たちの生活にどう影響するのかよくわからなくて。」 - 【西川先生】
「たとえばデジタル庁の設立が本格化すると、行政のオンライン手続きが進む。皆さんのマイナンバーカードを使ったサービスが広がるかもしれないね。首相が掲げる政策が実行されると、徐々に生活環境が変わっていくんだよ。」
麻美は小さく頷きながらノートを取る。クラスメイトたちも、首相交代というイベントを「自分事」として捉え始めているように見えた。
シーン2.衝撃の事件
【情景描写】
季節が巡り、夏休みを迎えるころ。明るい日差しの差し込む午前中、麻美は自宅リビングで宿題をしていた。窓からセミの声が耳に入り、陽炎が立ち昇るような暑さを感じる。
突然、テレビの速報音が鳴り、「安倍晋三元首相、銃撃を受ける」と大きくテロップが表示される。麻美は思わずペンを落とし、言葉を失う。
【会話】
- 【麻美】
「(息をのむように)え……元首相が撃たれたって……? どういうこと?」 - 【奈緒(母)】
「まさか、そんな……。遊説中に襲われたみたい。どうなってしまうの……。」
テレビの画面には、現場の混乱した様子や警察車両が映し出され、アナウンサーたちが繰り返し事件の詳細を報じようと試みている。
- 【麻美】
「(心の中で)こんなことが日本で起きるなんて……私たちの国って安全だと思ってたのに。政治家が撃たれるなんて……。」
数時間後、元首相が亡くなったというニュースが駆け巡る。麻美は胸が締め付けられる思いで、その報道を見つめる。
【情景描写】
後日、学校でもこの衝撃的な事件が話題となる。クラスメイトの中には「政治には関心ないけど、このニュースはびっくりした」と口々に話す子も。西川先生は急遽、社会の時間を使ってこの事件についての議論を促した。
【会話】
- 【西川先生】
「政治家への暴力は、民主主義社会にとって大きな衝撃です。どんな思想や立場であれ、言論ではなく暴力で人の命が奪われることはあってはならない。みんなはどう感じましたか?」 - 【クラスメイトB】
「僕、今まで政治家なんて遠い存在って思ってたけど、こうやって暗殺っていう形で亡くなるなんて……正直、こわいです。」 - 【麻美】
「私もショックでした。言い合いならまだしも、暴力で解決しようだなんて……。政治とか民主主義って、もっと話し合いで進めるものでしょう?」 - 【西川先生】
「そうだね。日本の政治は、国民の選挙や議会の審議を通じて成り立つ仕組みだから、暴力が入る余地はあってはならない。今回の事件で多くの人が、政治と社会のつながりを改めて考えるきっかけになるかもしれないね。」
クラス全体が重い空気に包まれながらも、政治の未来や民主主義の大切さを話し合う姿が見られる。麻美も複雑な思いを抱きつつ、「自分には何ができるのだろう」と心を巡らせるのだった。
シーン3.岸田政権の船出
【情景描写】
秋が深まり、校庭の木々も色づき始める。麻美たち3年生は受験勉強に追われながらも、世の中の動きに少しずつ関心を寄せていた。
新聞を開くと、「岸田首相、所信表明演説」「新しい資本主義」「防衛費増額検討」などの文字が踊る。コロナ対策や外交問題、経済政策など、多岐にわたる課題が報じられている。
【会話】
- 【大輝(父)】
「岸田さんは広島出身で、平和への思いが強いって言われてるね。最近の国際情勢は緊迫してるし、日本のリーダーとしてどう舵を切るか注目されてる。」 - 【麻美】
「この前の事件もそうだけど、政治って本当にいろんなリスクや責任が伴うんだなって思う。岸田首相も大変そう……。」 - 【奈緒(母)】
「そうだね。私もテレビの記者会見を見て、いろんな意見に耳を傾けようとしてる印象はあるけど、課題が山積みって感じね。」
麻美は社会科の授業で「岸田政権が掲げる新しい資本主義」「防衛力の強化」といったキーワードを耳にしながら、クラスメイトと話し合う機会を持つ。
- 【クラスメイトA】
「正直、難しいよね。防衛費を増やすってことは、軍事力を強化するってことでしょ? 平和主義の国だったはずなのに……。」 - 【クラスメイトC】
「世界情勢が変わってるから、安全保障を考え直すのも必要なんじゃない? でも、その分お金はどこから出るのかも問題だよね。」 - 【麻美】
「私たちも、もうすぐ18歳で選挙権を得る世代になるよね。自分たちの将来に関わることだから、ニュースや政策を少しずつ理解していかないと……。」
【情景描写】
夕方、帰宅した麻美は部屋でスマホを手に、「岸田首相 政策」「政府 方針」などのキーワードで検索してみる。SNSには様々な意見が飛び交い、評価も批判も入り混じっている。
政治のリーダーが変わると、日本の方向性も変わる――それは複雑でありながら、意思決定に関わっているのは私たち国民でもある。麻美はその現実を、少しずつ実感し始めていた。
あとがき
「政治の舞台裏 ― 令和のリーダーたち」では、令和期における首相交代(菅義偉氏~岸田文雄氏)や安倍晋三元首相の銃撃事件といった出来事を、中学3年生・麻美の目線を通じて描きました。
政治は難しく遠い存在に思えがちですが、首相や国会が決める政策は、私たちの日常に少なからず影響を与えます。そして、民主主義のもとでは、国民が選挙や言論を通じて政治に参加し、リーダーを選ぶ仕組みになっています。
令和の日本は、新型コロナウイルスや国際情勢の変化など、多くの課題に直面しています。だからこそ「政治は社会全体の問題」として、たとえまだ投票権がなくとも、その動向を注視し自分なりの考えを持つことが大切なのかもしれません。
本作が、「政治って何だろう?」「どうして首相が代わると世の中が動くんだろう?」といった疑問に少しでも答え、興味を持つきっかけになれば幸いです。
次回:【Ep.5】社会とイノベーション ― デジタル化とSDGs
用語集(歴史を学ぶうえで重要な用語の解説)
- 首相(しゅしょう)・内閣総理大臣
日本の内閣のトップ。国会議員の中から国会の議決によって指名され、天皇によって任命される。国の政策の方針を示し、閣僚を指揮・監督する。 - 政権交代(せいけんこうたい)
政権を担う政党や首相が変わり、政府のトップが交代すること。日本では内閣総理大臣が変われば事実上の「政権交代」と言えるが、同じ与党内での首相交代は厳密には「政権交代」と呼ばない場合もある。 - 安倍晋三元首相の銃撃事件
2022年7月8日、街頭演説中の安倍晋三元首相が銃撃され、搬送先の病院で死亡が確認された。戦後の日本政治史において極めて衝撃的な事件。民主主義社会における政治家の安全や表現の自由についての議論が喚起された。 - 内閣(ないかく)
首相と各大臣(閣僚)で構成され、日本の行政を担当する最高機関。法律や予算の作成、外交などを行う。国会に対して連帯責任を負う仕組み。 - 新しい資本主義
岸田文雄首相が掲げる経済政策のキーワード。分配と成長の好循環を目指し、賃上げや投資促進、格差対策などを重視するとされる。
参考資料
- 首相官邸公式サイト(歴代首相の政策や記者会見アーカイブ)
- 内閣府・各省庁の公式情報(コロナ対策やデジタル庁設立など)
- 新聞各紙・テレビ局の報道特集(安倍元首相銃撃事件、岸田政権の動向)
- 中学校社会科教科書(政治分野、民主主義と国会について)
↓ Nextエピソード ↓
コメント