【Ep.6】未来を見つめる日本 ― 世界情勢と平和への歩み

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全体構成案(シーン概要)

  1. シーン1:「遠い国の出来事?」
    • 中学3年生・誠也(せいや)が、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースをテレビやネットで目にし、「自分たちの日常とは関係ない」と感じていたが、徐々にその影響が日本にも及んでいることを実感していく。
    • エネルギー価格の高騰や物価上昇など、身近な生活への影響が描かれる。
  2. シーン2:「広島からのメッセージ」
    • G7広島サミットを前に、クラスの平和学習で「核兵器の恐ろしさ」と「被爆地・広島の思い」を知る。
    • 誠也が被爆体験者の語り部や平和活動家の声を聞き、「戦争は遠い国だけの問題ではない」と考え始める。
  3. シーン3:「平和への歩みと今後の日本」
    • G7広島サミットが開かれ、世界のリーダーたちが集まる。ニュース映像を見ながら、誠也は核軍縮や国際協力の大切さを感じ取る。
    • 周辺国との緊張や安全保障の議論が高まる中、誠也たちが「平和を守るために何ができるか」を考え、自分の将来と世界の行方を重ね合わせる。
  4. あとがき・用語集・参考資料
    • ロシアによるウクライナ侵攻の背景と日本への影響、G7広島サミットの意義、核軍縮・安全保障問題などを振り返り、平和の大切さについてまとめる。

登場人物紹介

  • 誠也(せいや)
    中学3年生。世界史好きだが、戦争や国際問題は「どこか遠い話」と感じがち。ロシアによるウクライナ侵攻のニュースをきっかけに、「平和は当たり前じゃない」と実感していく。
  • 里穂(りほ)
    誠也の同級生。学級委員をしていて、平和や国際問題に積極的に興味を持つタイプ。祖父母が戦争体験を話してくれたことから「二度と戦争は起こしてはいけない」と強く思っている。
  • 大森先生(おおもりせんせい)
    誠也の社会科教諭で、クラスの平和学習を担当。ニュースや歴史資料をうまく使い、戦争と平和について考えさせる授業を行う。
  • 被爆体験者・平和活動家(ゲスト講師)
    教室に招かれた語り部。広島出身で被爆の実体験や、家族の被爆体験について話す(※名前は仮名でも可)。
  • クラスメイトたち
    令和の国際情勢に驚きつつ、自分たちなりに考えを巡らせる。名前は必要に応じて設定。

本編

シーン1.遠い国の出来事?

【情景描写】
冬の朝、リビングに暖房のやわらかい温風が吹き付ける中、テレビのニュースではウクライナ情勢が大きく取り上げられている。爆撃される街の映像に息をのむ誠也。

窓の外は澄んだ冬空だが、世界のどこかでは戦闘が続いている――そんな対比が、遠さと同時に不安を感じさせる。

【会話】

  • 【誠也】
    「(テレビ画面を見つめながら)ロシアがウクライナに攻め込んで、もう1年近く経つのか……。映像が怖いっていうか、現実にこんなことが起きてるんだな。」
  • 【誠也の母】
    「最初は『まさか』と思ったけど、実際に続いてるものね。日本は遠い国だけど、影響は大きいわよ。ガソリン代や食料品も値上がりしてるし……。」
  • 【誠也】
    「お母さん、最近『節電して』ってうるさいもんね……。」
  • 【誠也の母】
    「電気代が上がって家計が大変なのよ。戦争が世界経済に影響するってことを改めて実感してるわ。誠也も自分事として考えてみなさい。」

誠也は母の言葉に小さくうなずきつつも、「でもやっぱりどこか他人事」という気持ちが拭えない。
しかし、学校では友達も「お菓子が値上がりした」「電気代が高くなった」と話している。遠い国の戦争が、日常の隙間からじわじわと入り込んでいるのを感じていた。

【情景描写】
登校中、誠也は大通り沿いのガソリンスタンドをちらりと見やる。価格表示は以前よりもずっと高額になっており、車を持つ家庭の負担が増えているのが分かる。
「戦争って、昔の歴史だけじゃなくて、今も続いているのか……。」誠也は改めて小さく息をつくのだった。


シーン2.広島からのメッセージ

【情景描写】
春先のある日、クラスの平和学習が行われる。教室の黒板には大きく「G7広島サミット」「核軍縮」と書かれており、テレビから録画した報道映像がプロジェクターで映し出されている。

世界各国の首脳が広島に集い、原爆ドームや平和記念公園を訪問する場面がダイジェストで流れる。

【会話】

  • 【大森先生】
    「今年、G7サミットは広島で開催されます。ここには原爆ドームがあり、被爆の悲惨さを伝える遺産が残っています。世界のリーダーが集まるこの機会に、改めて核兵器の恐ろしさや平和の尊さを考えたいですね。」
  • 【クラスメイトA】
    「核兵器って……第二次世界大戦で日本に落とされたやつですよね。アメリカの原子爆弾。」
  • 【大森先生】
    「そう。広島と長崎で多くの命が奪われ、後遺症に苦しむ人もたくさん出た。じゃあ、今日はスペシャルゲストをお招きしています。被爆体験の語り部の方です。」

教室に入ってきたのは白髪の男性で、広島の被爆者家族として活動している平和運動家だった。
生徒たちは静まり返り、彼の言葉に耳を傾ける。

【情景描写】
かつて焼け野原となった広島の写真、家族が亡くなった当時の様子――辛い記憶が次々と語られる。誠也も初めて本格的に被爆の実相を知り、「戦争の悲惨さ」を自分の胸に落とし込む。

【会話】

  • 【語り部】
    「私たち被爆者は、核兵器が二度と使われないように願ってきました。でも今、ウクライナでの戦争で核使用のリスクが語られるようになっています。『核の抑止力』という言葉で誤魔化しているけれど、実際に使われたら人類全体が被害を受けるんです。」
  • 【里穂】
    「……やっぱり核兵器はなくすべきだと私は思います。でも世界の強い国々は核を手放さないって聞きました。」
  • 【語り部】
    「簡単にはいかないけれど、対話を続けることが大切です。広島サミットが、その対話の大きな一歩になると信じています。」

誠也は、実際の被爆体験者の話を聞くことで、核兵器が「絵空事の恐怖」ではなく「現実の惨禍」をもたらすものなのだと痛感する。「遠い国の戦争だから」と他人事にするのは間違いかもしれない――そう強く感じ始める。


シーン3.平和への歩みと今後の日本

【情景描写】
初夏、G7広島サミットが始まった。テレビでは、各国首脳が原爆ドームを訪問する場面や、核軍縮・経済問題・ウクライナ支援など多岐にわたる議論が行われる様子を連日報じている。
誠也は家族と夕食を囲みながら、そのニュースを見つめる。

【会話】

  • 【誠也】
    「世界中のリーダーが広島に集まって、核軍縮とか平和について話し合ってるんだよね。今度のサミットで、核廃絶の方向に進めるのかな……。」
  • 【誠也の父】
    「理想を言えば、核兵器がなくなるといいけど、現実は簡単じゃない。大国同士のパワーバランスとか、安全保障の問題が絡むからね。」
  • 【誠也の母】
    「でも少なくとも、世界の目が『被爆地・広島』に向いて、核の被害と平和のメッセージを知る機会にはなると思うわ。」

誠也は学校でも友達とこの話題をする機会が増えていた。かつては「世界史マニア」と呼ばれながらも、自分とは関係ない世界の出来事を本で読む程度だったが、今は少し違う。

【情景描写】
昼休み、図書室で里穂とともに広島や長崎、そして世界の核保有国について調べている。
新聞や雑誌の切り抜き、オンライン記事が積み重なったテーブルに、日差しが差し込む。

【会話】

  • 【里穂】
    「ねえ誠也、『北朝鮮が核実験をするかもしれない』って記事もあるし、ロシアが核使用をほのめかす発言をしたこともある……。本当に怖いね。」
  • 【誠也】
    「うん。でも、やっぱり『戦争をやめろ』って声を上げ続けるしかないんだろうな。SNSでも世界中の人たちが『No War』とか発信してるし……。G7の首脳たちも、お互いの利害を乗り越えて協力してほしいよ。」
  • 【里穂】
    「私たち中学生にできることは限られてるけど、まずはこうやって情報を集めて考えることから始めよう。あと数年で選挙権も得るんだし、平和を守るために何ができるか意識するって大事だよね。」

誠也は自分なりにできることを見つけたいと強く思う。戦争や核兵器をなくすことは、一筋縄ではいかない。しかし、家族やクラスメイト、被爆者の語り部が語った「平和への思い」は、彼の心に小さな灯火をともす。

その日は図書室を出るまでに、二人で国際機関の情報やニュースをチェックし、ノートにまとめていた。

【情景描写】
やがてG7サミットが閉幕し、ニュースでは「核軍縮に向けた意欲は示されつつも、具体的な進展はまだ見えない」という論評が流れる。
それでも誠也はほんの少しだけ前向きだ。
「世界が問題を共有して、少しずつだけど動き始めている気がする。未来をつくるのは政治家だけじゃない。僕らも声を上げていける。そうすれば、遠い国の出来事も、自分の世界に近づいてくるはずだ……。」夕暮れの自転車置き場で、誠也は一人、風に揺れる雲を見上げながらそう思った。


あとがき

「未来を見つめる日本 ― 世界情勢と平和への歩み」では、ロシアによるウクライナ侵攻やG7広島サミットを背景に、国際関係や核問題、平和への取り組みを中学3年生・誠也の視点から描きました。

第二次世界大戦の原爆投下による悲惨な記憶を持つ日本は、平和主義を掲げながらも国際情勢の変化に直面し、さまざまなジレンマを抱えています。ウクライナ侵攻のように、戦争は「過去のもの」ではなく、「今この瞬間も続いている現実」です。

G7広島サミットで取り上げられた核軍縮やウクライナ支援の問題は、日本や世界の安全保障のあり方を考える大きなきっかけとなりました。ただし、国家間の利害や力関係は複雑で、すぐに解決策が見つかるわけではありません。

しかし、今回の物語のように、一人ひとりが「平和」を自分の問題として捉え、情報を集め、行動を考えること――それが社会を変える原動力になり得ます。「遠い国の話」ではなく、自分たちの未来にも直接関わるテーマだということを、少しでも感じてもらえれば幸いです。


用語集(歴史を学ぶうえで重要な用語の解説)

  • G7広島サミット
    G7(主要7か国:アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)の首脳が集まる国際会議が、2023年に日本の広島で開催された。核軍縮やウクライナ情勢、世界経済などが主要議題になった。
  • 核軍縮(かくぐんしゅく)
    核兵器を削減し、最終的に廃絶を目指す取り組み。NPT(核拡散防止条約)など国際条約や会議で議論されるが、核保有国の思惑が絡み合い、実現へのハードルは高い。
  • 被爆地・広島 / 長崎
    第二次世界大戦末期、1945年にアメリカ軍によって原子爆弾が投下された都市。広島は8月6日、長崎は8月9日に原爆が投下され、多くの市民が犠牲になった。現在も平和記念公園や原爆資料館などで悲惨な歴史を伝える。
  • ロシアによるウクライナ侵攻
    2022年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始。ヨーロッパ最大規模の戦争とされ、多数の死傷者や難民が発生。世界経済や国際政治にも重大な影響を及ぼしている。
  • 安全保障(あんぜんほしょう)
    国家や社会の安全を守るための仕組みや政策。軍事力の整備・国際同盟・経済的な相互依存など、多角的な要素で成り立つ。日本では憲法や自衛隊の在り方などをめぐって議論が続く。

参考資料

  • 外務省公式サイト(G7広島サミット関連情報、ウクライナ支援に関する資料)
  • 国連の各種報告書(核軍縮・難民問題など)
  • 広島平和記念資料館・長崎原爆資料館の展示・ウェブサイト
  • 新聞・テレビ局の戦争報道特集、平和学習関連の特集記事

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